POS 分類の違い
MeCab と Suzume では品詞分類の方針が異なるため、同じトークンに違うラベルが付くことがあります。Suzume は独自の特徴量・文脈規則から公開品詞体系(NOUN、VERB、ADJ など)を割り当てます。MeCab の粒度は辞書の粒度そのものであり、現代語・口語には粗い面があります — スラング、新しい代名詞、ナ形容詞語幹はしばしば単なる名詞に落ちます。Suzume はこれらを文脈からコンパクトなタグ体系に振り分けます。
トークン境界の違いを探していますか?
このページはトークンへの品詞の付け方を扱います。トークン境界の違い — 結合・分割・正規化 — は MeCab との違いを参照してください。
比較の読み方
各比較では、MeCab 行に MeCab の日本語品詞名、Suzume 行に公開 API のタグ(NOUN、VERB、ADJ など)を示します。MeCab の出力は、ユーザー辞書を使わず MeCab 0.996 と mecab-ipadic 2.7.0-20070801 で採取しました。別の辞書では境界も品詞も変わり得ます。詳細は比較条件を参照してください。
形容詞由来の「よく」
MeCab は語彙化した「よく」を副詞として分類します。Suzume は原形「よい」の連用形として ADJ を付与します:
一般の形容詞連用形(例: 美しく)は MeCab も形容詞として出力するため、差異例には含めません。
代名詞の認識
MeCab は多くの代名詞を普通名詞として分類します。Suzume はこれらを代名詞として扱います:
対象語: あなた、あんた、みんな、みな、皆、某、拙者、我輩、彼女、彼氏、奴、我、わし、いくら(疑問代名詞)
口語代名詞の「どいつ」「こいつ」「そいつ」「あいつ」も PRON として認識し、MeCab の辞書差によって表層が分割された場合は一語に正規化します。
ナ形容詞の認識
MeCab はナ形容詞語幹を名詞(形容動詞語幹)として分類します。Suzume はこれらを形容詞として認識します:
例: きれい、しずか、おだやか、げんき、しんちょう、ありきたり、無限、滅多。名詞用法と曖昧な語は文脈から判定します。
注: 一部の形容動詞語幹は意図的に名詞のまま維持: マジ、不安、不要、乙、不便、公式、可能、容易、積極、健康、傍若無人
て形後の補助動詞
接続の て/で の後では、補助動詞は独立した意味を失い AUX になります。MeCab がこれらを動詞(多くは非自立サブカテゴリ)とする一方、Suzume は構文ファミリー全体に一貫してこの分類を適用します。
進行の「いる」と試行の「みる」 — 本動詞の「いる」「見る」は他の文脈では VERB のままです:
授受の補助動詞 くれる・あげる・もらう:
完了の「しまう」とその縮約形「ちゃう」:
縮約進行形の てる/でる — 原形は「いる」のままです:
謙譲の「いただく」(否定形の「ご確認いただけません」も同じパターンです):
結果状態の「てある」は例外です — 「ある」は存在の意味を保ち VERB のままです:
目的表現と補助的な「ゆく」
移動動詞の前にあるひらがなの連用形は、目的を表す名詞的な検索単位として分類します。また、文語的な連用形+「ゆく/いく」は後半を動詞として扱います。
ひらがな動詞の活用復元
短いひらがなの撥音便が MeCab で名詞として解析された場合でも、後続の「だ/で」と活用構造から動詞と原形を復元します。また、語末の「う」が助動詞として分離された五段ワ行動詞は一語に戻します。
敬語依頼の動詞語幹
「お/ご+連用形+くださる/いたす/いただく」では、名詞と同形の連用形を文法構造から動詞に復元します。
接尾辞の認識
生産的な派生接尾辞には専用の SUFFIX タグを付与し、語幹は本来のクラスと原形を保ちます。
「名詞化のさ」は形容詞を名詞化しますが、Suzume は形容詞語幹を見えるまま保ちます:
「X 的+な」は 1 つのナ形容詞として扱います:
トークン境界を変える接尾辞 — 中、抜き、建て など — は MeCab との違いで扱います。
動詞由来の名詞
名詞として使われる動詞連用形は、MeCab の辞書が動詞の活用形とする場合でも NOUN を保ちます:
動詞由来の形は文脈によっても変わります。下の個別単語の品詞の違いにある「違い」「推し」も参照してください。
文脈依存の品詞判定
Suzume は曖昧な語に対して文脈を考慮した品詞判定を行います:
そう: コピュラの前では ADJ(そうだ=伝聞)、AUX の後では AUX(しまいそう=様態)、それ以外では ADV。
でも: 前に受ける語があれば PARTICLE、節の先頭では CONJ です:
いかが: コピュラの前(いかがですか)では ADJ、それ以外では ADV。
大変: 連体コピュラ「な」と「だ/です」の前では ADJ、副詞修飾(大変良い)と単独形では ADV。
どう: コピュラの前(どうだ)では ADJ、それ以外は ADV です。「どうする」や、か…どうか/どうか も ADV になります:
よう: 未然形の後の意志の「う」は AUX、ように/ような の形式名詞「よう」は NOUN です:
なら: 条件の「なら」は助詞のままですが、否定の前(ならない)と単独では動詞「なる」として解析されます。
助詞の分類
MeCab は特定の文脈で助詞を名詞として分類します。Suzume は 30 以上の助詞に対して文脈を考慮した品詞判定を行います:
準体助詞の「の」はここでは名詞ではなく助詞として機能しています。Suzume はこのようなケースで助詞として分類します。
口語のコピュラ・助詞
辞書の品詞体系では扱いが揺れやすい口語のコピュラ・助詞を、一貫したタグに正規化します:
| 例 | 語 | Suzume | 役割 |
|---|---|---|---|
| いいっすね | っす | AUX(原形: です) | くだけたコピュラ |
| いいじゃん | じゃん | PARTICLE | 口語の終助詞 |
| 夢みたい | みたい | AUX | 比況の助動詞 |
| 私なんか | なんか | PARTICLE | 例示・卑下の助詞 |
| 英語はおろか | おろか | PARTICLE | 「〜はもちろん」の助詞 |
| そうや | や | PARTICLE | 関西方言の終助詞 |
Suzume は一部の方言の述語末尾や助詞も文脈から判定します。たとえば「あかん」「へん」は AUX、「ねん」「さかい」は PARTICLE、丁寧なコピュラ「どす」は AUX です。すべての方言表現を網羅するものではありません。
カタカナオノマトペ
MeCab はカタカナのオノマトペ(畳語パターン)を名詞として分類します。Suzume は副詞として認識します:
「っと」で終わる擬態語も、全体を1つの副詞として保持します:
で+あるコピュラの処理
Suzume はコピュラ「である」パターンに文脈を考慮した品詞判定を行います:
ないの文脈依存判定
Suzume は「ない/なく/なかっ」が存在形容詞として機能する場合、AUX ではなく ADJ として分類します:
存在の否定
否定の助動詞
語彙的形容詞
連用形の「なく」も同様に文脈で区別します。動詞や受身・使役の語幹の後では AUX、形容詞の連用形の後や独立した欠如表現では ADJ です:
個別単語の品詞の違い
以下の語は MeCab と Suzume で品詞分類が異なります:
| 語 | MeCab | Suzume | 理由 |
|---|---|---|---|
| なら | 接続詞 | PARTICLE / VERB(文脈依存) | 条件の「なら」は助詞のまま。否定の前や単独では動詞「なる」として解析 |
| 違い | 名詞・ナイ形容詞語幹 | VERB / NOUN(文脈依存) | 単独形は VERB(原形: 違う)。違いない、違いがある、修飾語付き名詞用法は NOUN |
| 推し | 動詞 | NOUN(名詞) | 現代的な名詞用法 |
| 嫌い | 動詞 | ADJ(形容詞) | ナ形容詞 |
| 大変 | 名詞・形容動詞語幹 | ADJ / ADV(文脈依存) | な/だ/です の前は ADJ、副詞修飾と単独形は ADV |
| 超 | 接頭詞 | NOUN(名詞) | 現代的な用法 |
| びっくり | 名詞・サ変接続 | ADV(副詞) | 副詞用法 |
| なるほど | 感動詞 | ADV(副詞) | 副詞用法 |
| たくさん | 名詞・副詞可能 | ADV(副詞) | 副詞用法 |
| いずれ | 名詞・代名詞 | ADV(副詞) | 副詞用法 |
| おめでとう | 感動詞 | ADV(副詞) | 副詞 |
| じゃん | 接続詞 + 終助詞 | PARTICLE(助詞) | 口語の終助詞 |
| よう | 感動詞 | AUX / NOUN(文脈依存) | 未然形の後の意志の「う」(見よ+う)は AUX、ように/ような では形式名詞 |
| 時々 | 副詞 | NOUN(名詞) | 名詞用法 |
| 遥か | 副詞 | ADJ(形容詞) | ナ形容詞 |
| どう | 副詞 | ADJ / ADV(文脈依存) | コピュラの前は ADJ、それ以外は ADV |
| まじ | 助動詞 | ADJ(形容詞) | 形容詞(※カタカナ「マジ」は NOUN) |
| っていう | 助詞 | DET(連体詞) | 連体詞 |
| という | 助詞 | DET(連体詞) | 連体詞 |
| といった | 助詞 | DET(連体詞) | 引用連体詞(DET_引用) |
| まして | 副詞 | CONJ(接続詞) | 接続詞 |
| いわば | 副詞 | CONJ(接続詞) | 接続詞(言わば) |
| その後 | 名詞・副詞可能 | ADV(副詞) | 副詞用法 |
| しどろもどろ | 名詞・形容動詞語幹 | ADV(副詞) | 副詞用法 |
「寒し」は基本品詞の差ではありません。どちらも形容詞として扱い、Suzume は原形「寒い」を返します。
品詞の粒度
Suzume の基本品詞(pos)は MeCab よりもシンプルなタグセットです。
| MeCab | Suzume pos |
|---|---|
| 名詞,一般 | NOUN |
| 名詞,固有名詞,地域 | NOUN |
| 名詞,サ変接続 | NOUN |
| 名詞,副詞可能 | NOUN |
| 動詞,自立 | VERB |
| 動詞,非自立 | AUX(デフォルト) |
動詞,非自立 サブカテゴリはデフォルトで AUX に対応します。ただし一部の補助動詞(すぎる、くださる、あげる、くれる、もらう、いく、いる 等)は一律には変換されません。独立用法では VERB のまま、上のて形後の補助動詞のような文脈規則が補助用法の場合に AUX を付与します。
extendedPos は Suzume 独自の詳細な品詞体系です。次の表は MeCab の feature とのおおまかな類似を示しますが、MeCab のラベルだけから対応する Suzume 値が付くわけではありません。辞書フラグ、構造、文脈によって決まります。
| MeCab feature のおおまかな類似 | Suzume extendedPos |
|---|---|
| 名詞,固有名詞 | NOUN_固有 |
| 名詞,固有名詞,人名 | NOUN_名 / NOUN_姓 |
| 名詞,数 | NOUN_数 |
| 名詞,サ変接続 | NOUN_転成 |
| 名詞,形式名詞 | NOUN_形式 |
| 動詞,連用形 | VERB_連用 |
| 動詞,未然形 | VERB_未然 |
| 動詞, 活用形=仮定縮約1 | VERB_仮定縮約 |
| 形容詞,連用形 | ADJ_連用 |
| 形容動詞語幹 | ADJ_NA |
| 助動詞, 活用型=文語・キ | AUX_文語過去キ |
| 助詞,格助詞 | PART_格 |
| 助詞,係助詞 | PART_係 |
extendedPos は MeCab 辞書 feature の代替ではありません。たとえば固有名詞や数でも、Suzume 側に辞書または構造上の根拠がなければ単なる NOUN のままです。全値は API リファレンス の ExtendedPOS セクションを参照してください。
縮約仮定形
Suzume は、口語の縮約仮定形を一つの活用語として認識し、原形を保持します:
動詞形の extendedPos は VERB_仮定縮約、形容詞形は形容詞の活用カテゴリです。